広報8月号 地域おこし協力隊トークセッション企画

おおたまいどばた会議 with 地域おこし協力隊

「大玉村が映し出す姿」 担当:小川               
                                  

広報の紙面に載せきることができなかった部分を含めた拡大版!

よりテーマを掘り下げた内容となっています。

全5回を通して移住者を中心に自身の活動や大玉村について対談していきます。その中で大玉村ってこんな一面があったのか、こんな活動や面白いことがあるのか、新しい発見をみなさんにお届け出来れば幸いです。


● 対談者

臼井秋平さん/大玉カレー店主
・1987年神奈川県生まれ
・幼少期に家族で大玉村に移住
・大学進学を機に神奈川県に移り住む
・社会人を経験後、2018年大玉村にて大玉カレーを創業


● 簡単な内容

幼少期に神奈川県から大玉村に移住し、高校生まで大玉村で過ごし、大学進学を機に神奈川県に移り社会人生活を送る。そして、大玉村に戻って、大玉カレーを創業した臼井さん。
大玉村と神奈川を行き来する臼井さんの地域での暮らし方、大玉カレーにかける想いや展望について話していきます。

抽象的な言葉ですが、”面白い”がキーワードになっています。みなさんの中での”面白い”とは何かを考えながら読んでもらえればと思います。

● 目次



―大玉村で過ごした少年時代―



地域おこし協力隊・小川晴喜:臼井さんの出身と移住してきたのはいつ頃ですか?

臼井さん:生まれは横浜で 幼稚園生の時に家族4人で引っ越しきたから、4歳ぐらいかな。

小川:そうするとその頃のことはあまり覚えていないですか。

臼井さん:そうだね。でも、初めて方言に触れた時のことを覚えているよ。友達の男の子がカバンに貼ってあったシールを剥がして「これ、くれっから」と言って、シールをくれたんだ。その時ジェスチャーで、くれるって言ってるけど「これ、あげる」って意味だなと思ってありがとう と言ったのすごい覚えてる。

小川:方言はありますよね。よく聞くのは「んだから」とか。私は末っ子なので「ばっちこ」ですね。

臼井さん:まだちっちゃかったからすぐ友達はできたし、そこから小中学校は楽しく過ごせてたかな。



―大玉村を離れる決断―



小川:高校まで大玉村で過ごして、大学は横浜の行ったんですよね。それはなぜですか?

臼井さん:大学に行こうと思っていて、一人暮らしはしたくないけど村から通うのは難しい。だから自然と祖母の住む横浜に戻ろうと。

小川:大学を進学するから福島から離れることになったんですね。

臼井さん:そうだね。大学進学するならここからは通えなかった。

小川:友達も多い福島から離れるのは寂しさはありました?

臼井さん:地元の仲良い友達も高校の友達もみんな各々関東や仙台とかに行く人が多かったから みんな散り散りになるのはわかっていた。高校のラグビー部のつながりはなくないだろうと思っていたし、それよりも新しいところにいくワクワク感の方が強かったよ。

小川:私は都心で過ごしてきたので、大学進学も地方に行く人はほんの少しだったので、生まれ育った場所から離れる感覚とは違いがありそうですね。

臼井さん:もう携帯もあったし、すぐ連絡も取れる環境にはなっていたからね。

小川:大玉村を離れた時、大玉村ってどういう存在でしたか?

臼井さん:両親がいるから顔を見せに帰るみたいな感じだったかな。大学の頃はなかなか帰れなかったけど、こっちは本当に癒される場所だった。両親に会ってなんかホッとするし、緑もいっぱいあるしいい場所だなって感じてた。

大玉カレー(金泉閣)にて対談中


―社会人で学んだコミュニケーション―



小川:大学を卒業したあとは?

臼井さん:ちょうど俺らの年代2010年はリーマンショックで就職氷河期だったんだ。本当にとりあえず内定取れればどこでもいいって、みんな必死になってた。俺ももう手当たり次第行けるとこは全部行って面接しまくってたよ。

小川:大変な時期でしたね。

臼井さん:でもいい経験になったよ。就職したドラッグストアの面接を受ける時には心に余裕ができていたよ。

小川:ドラックストアに就職されたんですね。ドラックストアのお仕事は大変だとお聞きしますが?

臼井さん:お薬の勉強だったり、発注やクレーム対応とかいろいろやったね。大学の頃も焼肉屋でバイトしていたけど、しっかりとした接客を学ぶことができたのはドラックストア時代かな。それはカレー屋になった今でも力になっていると思う。

小川:どれくらい働かれたのですか?

臼井さん: 2010年入社で18年の終わりぐらいかな 9年ぐらい働いていたよ。数店舗ではたらかせてもらったし、新店のオープンにも携わっていた。しっかりした会社でいろんな経験をさせてもらったね。


―大玉カレーのはじまりー



小川:そこからやめてすぐ福島に戻ってこようと思ったんですか?

臼井さん:そうだね。転職をしようとも考えてたんだけど、自分で何かしたいと思ったんだ。接客は好きだったし食べるのも好き、旅館の金泉閣は営業許可も取ってあって、いろんな食器やスペースもある。ここで飲食店をやりたいと思って戻ってきた。

小川: 金泉閣で飲食店やろうと思った時にカレー屋さんをやろうと。

臼井さん:そう。ラーメン屋さんかカレー屋さんで迷ったんだけど、この雰囲気に合うのはカレー屋さんだなって(笑)

小川:ラーメン屋さんだとあまり話せなさそうなので、カレー屋さんでよかったです(笑)

大玉カレーは今何年目ですか?

臼井さん:今5年目だね。秋で丸5年になる。

大玉カレー(800)


―大玉カレーに求められるモノ・コト―



小川:私が初めて大玉カレーに来た時も常連さんがいて、なかなか濃い話をしていたのを覚えています。通うようになると面白い人が集まってきていますよね。このように人が集まってきたのはどの時期ぐらいからですか?

臼井さん:始めた当時からだね。地元の人だろうと、村外の人だろうとどんどん変な人が集まる場所になっていった。

小川:村内外から人が集まってくるのはすごい事です。

臼井さん:求めてるものがみんな違ってくる。地元の人たちは純粋にカレーを食べに来てくれて、地元トークをして帰っていく。村外から来る人たちはここになにか面白い人やモノやコトがいないかなと探しに来たりするね。

小川:臼井さんはお客さんと積極的にお話しされていますよね。臼井さんがお話しが上手いから面白い店主がいるお店だとになって人が来るようになっているんだと思います。

臼井さん:思うのは、俺自身面白い人間じゃなくて、聞くのが得意なんです。俺は日本語が苦手でうまく伝えられないから、喋ってもらった方が面白いし、相手の考えを知ることができるから、勉強にもなる。

小川:聞き上手なのは強みですね。

臼井さん:強みだと思う。何もなくて聞き上手だからこそ、趣味を共有したいっていう人たちがここに集まってくるんだと思う。

小川:サードプレイスとして機能していますよね

臼井さん:昔から、人を集めて一緒に何かしたり、そういうことができる場所が欲しいと思っていて、それがここで出来始めているという実感がある。


―イベントに出るメリットー



小川:今はお店だけではなく、土日はよくイベントに出店されていますが、 オープン当時からですか?

臼井さん:比較的始めの頃からだね。それこそ研吾さん(元大玉村地域おこし協力隊)が誘ってくれたイベントで大玉村のビニールハウスの中でやったんだけど、それが一番最初に出たイベントだったね。そこで、イベントに出店するの楽しいと思ったんだ。

元々店舗で待ち構えてるのが好きではなかったから外には出たかった。だけど、どうやって出たらいいかわかんないなぁと思ってた時だったんだ。

イベントに出るようになると大玉カレーを来た人に認知してもらえて店舗にも来てもらえる。あとは、イベントに出店できる店だと知ってもらうと、いろんなイベントに誘ってもらえるようになっていった。

小川:一つ一つイベントに出るようになって、人との輪が広がっていったんですね。一歩踏み出すことができたら、次々とつながっていったのは臼井さんのコミュニケーション力も大きく関係していると思います。

臼井さん:ここで、前職で学んだことが活かせた気がした。

イベントの様子


―地方ならではの宣伝効果ー



小川:いろんなところ行ってるからこそ、大玉カレーは大玉村にとどまらず、いろんな方に知られていますよね。インスタグラム(SNS)のフォロワー数も多いじゃないですか。

臼井さん:そうだね。ありがたいことだよ。もうちょっとで1000人いきそうなんだ。やっぱりSNS含め、外へのアピールは大切だと思った。大玉カレーを始める時、地方のほうがメディアに出られるチャンスが多いと思っていたし、実際に取り上げてもらえた。

イベントに出た際に、テレビで見たことあると言ってもらえたりする。最近テレビに出てないけど、見てもらった時の記憶が片隅にあるみたいで声かけてもらえるのは嬉しいね。

大玉カレー(金泉閣)にて対談中


―大玉カレーの目指す姿―



小川:これからカレー屋さんとして目指すところはどこなんでしょう?

臼井さん:ありきたりな答えだけど、もっともっといろんなマルシェとかイベントに出て、お客さんと繋がったり、出店者さんとの横の繋がりも増やして行きたい。

小川:横のつながりを作ってどうしたいですか?

臼井さん:出展者さんが大玉カレーさん美味しかったですよって言ってくれたら、そのお客さんも買ってくれるかもしれない。
出展者さんにおすすめされるお店ってすごく魅力的じゃない?

直接たくさん売るのもいいけどちょっと遠回りして、出店者さんを通して買ってもらった方がいつもより少し美味しく食べてもらえる気がするんだ(笑)



―大玉と横浜ー



小川:横浜に実家があって、大玉村には金泉閣がある。この二拠点居住のメリットは何か感じますか?

臼井さん:神奈川の知り合いが開催するイベントで、大玉村の野菜やカレーを販売できたり、その時に宿泊できる場所があるのはメリットだね。あとは、横浜でキッチンカーをやってる知り合いがいて、定期的に カレーを出してもらってるんだ。

小川:うまく二拠点を使えていますね。

臼井さん:大玉村に基本住んでいるから、横浜で深い関係を築くのは難しいけど、幅広くできるようになってきたのかな。

小川:私は二拠点とは呼ばないかもしれませんが、東京で生まれ育って友人は基本的に東京近辺に多いです。友人と話していて、大玉村に来たいと言ってくれる友人は金泉閣に泊めさせていただいています。こういう場所があるのとないのだと大きく違います。

そういった点でも、宿泊と食事のできるここが拠点となり、大玉村に影響を与えられる所になれるのではないでしょうか。

臼井さん:大玉村はやっぱりお米が有名だし 野菜もおいしい。それがあるからカレー屋さんができている。実際に大玉村に来てもらってもいいし、横浜に送ってもいい。手段はいくらでもできるし幅も広げられるだろうね。この2拠点を上手く使っていきたいね。

小川:大玉村って横浜出身やゆかりのある人たちも多いですよね。そういう人脈がどこか繋がっ ていくことで、何かできないかと。

臼井さん:とっかかりがありそうな予感はあって、話し合いは今もしているね。父親も含めてこれから動いていければと思っているよ。


―おおたま温泉の学校と展望ー



小川:カレー屋さんにとどまらず金泉閣(大玉カレーのある旅館)でクラブタイムだったり、おおたま温泉の学校もやられていますよね。渡辺さん(元大玉村地域おこし協力隊)がいてっていうのもあると思いますが、やはりこの場所があって、臼井さんがいるというのは大きいと思います。これからやってみたいことはありますか?

臼井さん:おおたま温泉の学校っていうものを渡辺さん(元大玉村地域おこし協力隊)と作りあげてきた。今後学園祭とフェスをやってみたい。授業があって、ゼミがあって部活(卓球)があるから次は学園祭があったら面白いよなと思っているんだ。

月一のクラブタイムも最近は多くの人が来てくれるようになって、この会場だけじゃ収まらなくなったから、クラブタイムをそのままどこかに移動して開催したい。

小川:ここでできたものが街に出ていくのは面白いですね。

臼井さん:面白いことをしたいがずっとある。ただ、その面白いの基準は人によって全然違う。

人によって楽しい楽しくないが違うからできるだけその人の楽しいを実現させたいって思ったりする。

小川:臼井さんからは謙虚さというか親密さを感じますね。

臼井さん:自分は「これやりたいんだ!」っていう明確なものがあんまりなくて、他の人がやりたいことを一緒に楽しみたくなる性格なんだよね。

小川:でもそういう人材がいるかいないかは大きいですね。人には向き不向きもありますから。

臼井さん:これやりたいんだって言ってもなかなか人って集まらないから、表に出て集められる人って必要だと思う。人が集まれる場所に、”多くのつながりを持ってる人”と”やりたいものを持ってる人”がいることで面白いことができると思う。

月一クラブタイムにて


―”面白い”を実現する場ー


小川:言葉にするのが難しいですけど、ここに集まった欲望みたいなものが様々な分野に関わる人の中で揉まれていくことで面白いことができる場所のように感じています。

臼井さん:それが起きては消えてを繰り返すそういう場所になってるのかも。

いろんな案は出るけどそれを形にするっていうことはほとんどの人ができないし、やろうとも思わない。一人でできることならやってたけど、人を集めて誰かが役割分担させて…とかなるとなかなか難しい。だからこそ形にしたい。

小川:ここは話し合って何か面白いことを構想する場所っていうか、そういう何かが起きる根源の場所みたいになっていますね。

臼井さん:それこそ大玉温泉の源泉なんじゃない。

小川:アイディアが湧き出てくるんですね。臼井さんのお父さんが言っている湯つなぎの文化にも近いように感じます。

臼井さん:次につなげるということは相手のこと考えるということだよね。イベントが収まるようにやっぱり一人じゃ無理なんで、想いやりも持たないといけなくて、それを理解してくれる人がここにはたくさんいる。

小川:集まっていますよね。

臼井さん:そうそう。だから何も言わなくても、これは俺やっとくよみたいな関係性ができているのが助かるし、ここの魅力かな。


大玉カレー (ロゴ)


―臼井さんにとっての大玉村ー



小川:最後に臼井さんにとって大玉村もしくは金泉閣ってどんな場所ですか。

臼井さん:まだまだ楽しめる場所かな。

小川:まだ満足してないということですね。

臼井さん:多分満足しないんじゃないかな。だって自分のやりたいことないんだから。だけどなにかしていたい。

小川:それってすごくいいですね。私は地域おこし協力隊という立場ではありますが、地域を起こせ、地域創生だっていうのがスタートにあるように思います。ただそれは目的じゃなくて通過点でしかない。何かやりたいがあって、じゃあそのために何をしようっていう流れが本来あるべきだと思います。臼井さんにとって面白いことをやっていたいというのがやりたいことなんだと思います。

臼井さん:面白いことをずっと探しているんだろうね。 本業としての大玉カレーもあるし、遊ぶ手段としても大玉カレーがある。面白いツールだね。

大玉カレー(金泉閣)にて対談中

対談を終えて


第二回目は大玉カレーの臼井さんと対談させていただきました。大玉カレーのある金泉閣は日々愉快な方々が集まってきます。そのキーマンになるのは大玉カレー店主である臼井秋平さんです。

臼井さんは幼少期は大玉村で過ごし、社会人を横浜で過ごしたのち、大玉村でお店をやられているということで、双方の良さを知っている方です。もう一度大玉村をとらえ直そうとする今回のテーマに適任だと考えました。

”面白い”がキーワードになっていると冒頭に書きました。
みなさんにとって面白いとはどういったことでしょうか。
代わり映えのしない日々が続くと何か面白いことないかなと考えたことは誰でもあると思います。ただ、面白いことを思いついても実際に実行に移すと難しく、できないことのほうが多いです。
大玉カレーではその”面白い”ことを考えていたい人がよく集まっています。

臼井さんにとって面白いことをし続けるために大玉カレーがあります。大玉カレーを軸にイベントに参加したり、村内外から人の集まる場となっています。

何か面白いことをしてみたいと思っている方は一度大玉カレーに食べに行ってみてはどうでしょうか。話し好きで愉快なお客さんもいるかもしれません。

次回は大玉村でトレイルランニングの大会を主催している高橋時美さんとの対談です。お楽しみしていてください。
10月中旬頃更新予定です。





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