広報6月号 地域おこし協力隊トークセッション企画

おおたまいどばた会議 with 地域おこし協力隊

「新人地域おこし協力隊、村の先輩に聞いてみた!」 担当:遠藤愛佳

広報の紙面に載せきることができなかった部分を含めた拡大版!
トークセッション中の空気感や、お人柄がより伝わる内容になっています。全5回、異なる空気感を感じていただき、楽しんでいただけたら幸いです。


● 対談者

後藤みづほさん/森の民話茶屋店主
・福島県二本松市出身
・県青少年健全育成会議 講師
・元劇団シアターあだたら 主宰
・森の民話茶屋運営委員会 委員長・店主
2000年(平成12年)7月 森の民話茶屋オープン


● 簡単な内容

森の民話茶屋店主・後藤みづほさんに森の民話茶屋への想い、民話を通じた育み、訪れた人との心の通い合いなど、後藤さんの心に触れるお話を伺いました。

これまで「県青少年健全育成会議」講師や「元劇団シアターあだたら」主宰など幅広い活躍をしてきた後藤さん。
様々な場所で様々なものを見てこられた後藤さんの『今』の想いを深掘りしていきます。


● 目次



―言葉を紡いで、心を通わせるー

地域おこし協力隊・遠藤愛佳(以下遠藤):まずは、森の民話茶屋のことについて教えてください。

森の民話茶屋店主・後藤みづほさん(以下後藤さん):森の民話茶屋は、築35~6年の木造のロッジ風 の建物の中で、地元の食材を使った身体に良い食事と、それから心にやさしい昔話を同時にお客様に提供する場所です。

そういう癒しの場をつくりたいという思いでつくった場所なんですよ。今年で24年目。コロナ禍で1年休みましたけどね、24年目になります。

遠藤:24年の間にメンバーが変わったり加わったりしたと思うのですが、そういった中で(森の民話茶屋を)パワーアップさせてきたんですか??

後藤さん:そうですね。みんなそれぞれに事情があって変わったりしますよね。そのたびに乗り越えながら。でも不思議なことにその都度才能豊かな人たちに出会うことができたから、この村の女性たちの場所として成り立ってきたのかなと思います。

順調にばっかり来たわけではなくって、山あり谷ありでしたね。

遠藤:24年の中で1番大変だった山はコロナですか?

後藤さん:コロナは世界的に大変だったことではあるので、もちろん大変だったけど、

1番大変だったことは、ベテランの方が体調を崩されて交替の時期に当たった時、とても大変でした。

遠藤:そうですよね、またガラッと変わってしまいますよね・・・。

後藤さん:本当にね、手作りって人と人との関係もそうなんですよね。でも、さっきも言ったけど不思議な ことにその都度乗り越えてこられたのは、この村の誰かが手を差し伸べてくれたから。乗り越えられない事はないなってつくづく思う。

遠藤:それはやっぱり、みづほさんの人柄があるからこそですね。                                         

後藤さん:そうだと嬉しいんですけどね。



―ふさわしい場所にするために―


後藤さん:でも本当に、この建物自体が癒しの場になるっていう事は、最初は想像もつかなかった。役目が終わって10年くらい空き家になっていたものを活用して。

今流行りの「もったいない」。ココのお水が美味しいのにもったいない、素敵な建物なのに閉じてあるのがもったいない、空き家になっているのがもったいない、っていう気持ちが原動力でしょうね。

でもね、それが(人が入っていくようになって)見る間に変わっていくでしょ。それは何にも代え難い。だってお客様の笑顔を見ると疲れも吹っ飛ぶし、『また来るよ』って言って下さると励みにもなるし、不思議なものよね。

遠藤:そういう反応が返ってくると、やっている意味というものを感じられますよね。

後藤さん:それでね、今日はお客さんが入っていなくても開店準備のお掃除で皆(茶屋スタッフ)が集まって分かったと思うんだけど、人が在っての建物なんだね。やっぱりただの空間ではなくて、人がいるからこそ意味のある建物になるっていうか。

遠藤:やっぱり「人がいてこそ」なんですね。

後藤さん:そう。そしてね、そこに小さな1輪の花でも飾ることによって、もう本当に雰囲気が変わるの、明るくなる。そういう所にも意味を持たせて、日常とは違う場所を作る。日常とは違った癒しをココに来て感じて元気になって、そしてまたそれぞれの日常に戻っていく、それが大事なこと。

遠藤:そういう癒しが大事ですよね。

後藤さん:ふらっと来てオーダーも何もしなくていいから、ただボーっとしてくださるだけでいいよね。そういう場所になったらいいな。やすらげる居場所に、帰ってきたくなる場所になれたらいいなって思う。




―目に見えないものを大切にすること、それが喜び―

遠藤:私的に、お店のパンフレットに書かれている『民話の料金はお客様の笑顔で』という言葉がすごく暖かくていいなと思いました。

後藤さん:いい所に気が付いてくれた、夢中になって(パンフレットを)作ったんだけれども、そういう目に見えないものが私の喜びなんだよね。交流の場という(表面的な)だけではなくて、表現が難しいけど、心が触れ合う、心が通じ合う場所でありたいなって。

遠藤:例えば飲食だけを目的とする店であれば、ただ食べるだけで完結すると思うんですが、森の民話 茶屋はやっぱりそれだけではなくて。

もちろん美味しい手料理を食べにくるっていう大きな目的はありますけど、それだけではなく民話を聞い て想いを馳せたり、茶屋のスタッフと共に温かい時間を過ごしたり、建物に癒されたり。お腹を満たす為だけの場所ではないから、素敵なもので溢れている空間だからこそ、沢山の人の帰ってきたくなる場所に、居場所になっているんだなと感じてます。

後藤さん:嬉しいですね。お店が忙しいと疲れは出るけど、お客様が前にいてくださるとその間は元気で いられるというか。お客様からパワーをいただくし、お互いがパワーを与えあっているっていう人間らしさがあるんだね。

それに加えて、1輪の花や絵を飾って空間を演出して、それぞれの人にイメージを膨らませてもらって心を満たしてもらう。偶然私の民話を聴いて心が晴れて元気になって帰っていく方もいらっしゃるし、料理ひとつにしても食べて何かを感じる、そういう目に見えない(心が動く)ものを共有したいんだよね。

だから私にしてみれば、店内のもの全部に物語がある。全部がこの場所を成り立たせて、ひとつひとつが場を整えてふさわしい場所にしている。


―伝統の民話を伝える場には、新たな風と共に進み育んでいく力強さがありましたー


後藤さん:全部に物語があって、思い出も詰まっている。

そういう目に見えないものを積み重ねていくためにも、いくつになっても常に新鮮な心で見る必要がある わけよね。いつでも新鮮な気持ちでいて、それでかけがえのないものに出会えた時は至上の喜びを感じられるね。

この喜びがあるから、これまで継続してこられたんだと思うよ。辛いことだって現実的にはあるけれど、人と人とが出会って間近で話をしたりすることで必ず乗り越えられるようになっていると思うんだ。

遠藤:続けていく、進んでいくための糧はやっぱり人との繋がりで、森の民話茶屋がそれを保ち続けられているのは、みづほさんが新鮮な心を持ち続けているからなんですね。

後藤さん:(目に見えないものを大切にすることに加えて、)それから私は壁があると乗り越えたくなるの。引き返したり遠回りはなおできない。やっぱり乗り越えたくなって、若い頃は随分失敗したと思う。

遠藤:乗り越えようって思って本当に乗り越えていくこと、中々できないことですよね。どちらかと言えば、私は避けてしまいたくなるので、みづほさんの強さが羨ましいです。



―縁を繋ぐ森の民話茶屋―


後藤さん:私が民話と出会ったのもユキばあちゃん(お姑さん)との出会いがあったからで、この建物との出会いだってまなかちゃんとの出会いだって、不思議なことだね。出会いっていうのはすごいよね。毎回その出会いを楽しんで、その都度新しい感じを受けて、出会った人と助け合いながら森の民話茶屋を運営するっていうことが私を育んできてくれたんだね。

店内に明かりが灯っているのを見て女性2名が訪ねてきた。


後藤さん:嬉しいこと。ありがたいね。こうやって来てくれる人がいるっていうのは。

コロナの影響はすごく受けてお客様の動きも変わったけど、それでも来たいっていう人がいるのがありがたいね。

遠藤:今の出来事からも森の民話茶屋の存在感が見えますね。

コロナに対する社会の対応がまた変化しているので、これからに期待したいですよね。コロナ禍を経て、変わったことは多くあるけど、森の民話茶屋が沢山の人の帰ってきたくなる場所だっていうことは、変わらずに保ち続けていきたいですよね。



―とにかく自由に、楽しんでほしい―


後藤さん:まなかちゃんくらいの年頃は特に感受性が強い年頃だからさ、楽しんでやってほしいな。現実的なものと目に見えないものを追いかけること、2つを求めることは大変だと思うけど、それをこなしていく姿を見られたら、私も最高に安心できるな。とにかく、自由に楽しんでほしいなと思ってる。

遠藤:そういう風になれたらいいなって思います。みづほさんの思いを受け取れるようにしていきたいなと。

後藤さん:あんまり頑張りすぎないで楽しみながらね、ご褒美が来ると思って。自由に、楽しんでいきましょう。




―最後に、これからの森の民話茶屋についての想い―

後藤さん:1人でも多くの人との出会いがあって、そしてこの空気感を楽しんで癒されてほしい。村全体も含めて、この空気感を楽しめたら嬉しいな。


対談を終えて

森の民話茶屋が『心を癒す場』としてあり続ける理由は紛れもなく『形はないけど何にも代え難いもの』を大切にする後藤さんと、心を通わせ共に進み育む森の民話茶屋の女性たちにあることを身に染みて感じています。

遠藤は地域おこし協力隊の活動として森の民話茶屋の運営に関わり、民話継承方法と運営維持方法の模索を行っていきます。森の民話茶屋のみなさんから様々なことを教わり同じ時を共有して、時間は掛かってしまいますが、皆さんから頂いた愛を返していけるよう尽力していきたいと思っています。

出会った人たちの力を借りて一緒にこの灯りを灯し続けていきたい、そう思います。



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