広報10月号 地域おこし協力隊トークセッション企画

おおたまいどばた会議 with 地域おこし協力隊

「新人地域おこし協力隊、村の先輩に聞いてみた!」 担当:遠藤愛佳

広報の紙面に載せきることができなかった部分を含めた拡大版!
トークセッション中の空気感や、お人柄がより伝わる内容になっています。全5回、異なる空気感を感じていただき、楽しんでいただけたら幸いです。

● 対談者


古川沙織さん
・大玉村出身
・会社員の経歴を経て、2015年あだたらドリームアグリ㈱の会社設立を機に本格的に農業に参入。

沿革
・平成19(2008)年 当谷地地域が集落営農組合を設立
・平成27(2015)年10月30日 農業生産法人としてあだたらドリームアグリ株式会社設立


● 簡単な内容

ふるさと納税の返納品からDASH村まで幅広くご活躍のあだたらドリームアグリ㈱の古川沙織さんに、村の農業、仲間との関わり、村の女性たちのことについてお話しいただきました。
古川さんのお話しから、大玉村のあたたかさの理由がわかったような気がします。


● 目次



―あだたらドリームアグリという存在ー

遠藤:まず、「あだたらドリームアグリ㈱」という会社のことについて、教えてください。

古川さん:平成27年に設立した会社で、今年で9年目になります。

遠藤:そうなんですね。もっと何十年と長くやられているのかと思っていました。

9年前、どういった経緯で始まったんですか?

古川さん:ドリームアグリは、谷地の集落営農から始まったんだね。集落営農として満期を迎えた時に解散するかどうするかってなった時に、うちの代表が、集落営農の形を基に会社を立ち上げようって動いて。

今の会社の形になってからは、谷地の集落営農の人たちにも田んぼを委託して、まだ皆さんが働けるうちはお願いしてやってもらっている形だね。

遠藤:元の形を残して、田んぼに関わる人も変わらずにいるっていう状況があるからこそ、広く田んぼを守っていける、ということなんですね。

古川さん:これから農地を守るために、代表が「こういうところが必要だ」って。「みんなの受け皿になる所が必要だ」ってなったことが、ここの始まりかな。

遠藤:「農地を守るため」っていうのが根幹にあるんですね。

やっぱり、仕組みや枠組みがないと農地を守るっていう事は難しいですか?

古川さん:うん。そうだね。

(会社のパンフレットを見せてくれる)



―村で育ったこどもたちは―


遠藤:このいどばた会議で誰に対談をお願いするか考える時、私は村の女性たちに話を聞くっていうのは元々決まっていたんですが、村にどんな方がいてどんなことをやっているのかまだ全然わからない状態で。そこで協力隊の先輩である小川さんに、”ドリームアグリ㈱は村の子ども達に農業に触れる体験・経験の場を作っている”ことを教えてもらって。

子どもたちが農業に触れる機会をつくることは、会社立ち上げの目的である「次の世代に豊かな土地と思いを残すために」という部分に繋がっているのです か?

古川さん:そうだね。この会社を設立してからは毎年、大山小学校の小学5年生を対象に、田植えの見学と稲刈りの見学の場を設けている。

遠藤:じゃあ9年間も続いている体験・学習の場なんですね。

古川さん:そう。そのなかで、将来この仕事に就きたいって思ってくれる子がいたらいいよねっていう思いでやっているね。

遠藤:やっぱり、農業を身近に感じられる場があるっていうのは、今後に繋げていくためにも良いことですよね。

古川さん:昔は実際に子どもたちに田植えも体験してもらうっていう形だったんだけど、原発の後は見学だけっていう形になってしまって。

遠藤:やっぱりいろんな場面で影響が出たんですね。

古川さん:そういう流れになったね。

遠藤:形は変わりながらも、子どもたちが農業に関わる場は守り続けているということですね。

古川さん:そうだね、見学自体は1〜2時間の事なんだけども、でも大玉村って学校でも米作りにすごく力を入れていて、子どもたちはお米の勉強もすごくしているし。見学はその勉強の為のお手伝いの1つだって思ってる。

遠藤:そういう想いがあるからこそ、9年間続いているんですね。

前に、大玉村の子どもたちはお米の違いが分かるっていうのを聞いたことがあって。それはすごい衝撃でした。

この強みはずっと残りますよね。大玉村の外に出ても、どこにいても通じる強みだなあと思います。

古川さん:その子たちが「大玉村のお米美味しいから食べてみて」って言ったら、ね、広がっていくよね。

遠藤:いろんな場面で広がっていくと素敵な繋がりが出来ていきますよね。



―「喜びの秋」―

遠藤:沙織さんからみた、大玉村で農業をやることの良さ・大変さを教えてほしいです。この土地ならではの何かは、ありますか?

古川さん:まず、良さは大玉村の環境がいいってことだよね。お米を育てる環境としては、すごく整っていると思うよ。

あとは、日々大変なこともあるけど、それをあまり大変と思わず、今のこの秋の収穫を楽しみにやっている。やっぱりみんな秋の収穫が一番楽しいって言ってる。自分たちが一年かけて作って来たものがお米となってできて、それを皆に食べてもらって喜んでもらえるっていうのがあるよね。

だから秋はもうみんな楽しんでる。「喜びの秋」って感じです。

遠藤:「喜びの秋」って素敵ですね。みんながそう思ってやっているっていうのが愛情がこもって余計においしくなりそうですね。1年間の結晶ですもんね。

古川さん:そのつかの間の喜びがあって。そこから課題が出来てまた考えてって終わりはないんだけど。その喜びと、これからの課題が同時に出てくるのが、秋。

遠藤:今日(インタビュー日)ちょうど稲刈りが始まったと聞きましたが、今年はどうなりそうですか?

古川さん:いつもは9月末ごろから稲刈りが始まるから、ドリームアグリの稲刈りが8月中に始まるのは今までで初めて。農業は賭けのような部分があるから、今すごいドキドキ。

今後は温暖化の影響とかも考えて育てる必要があるなと思っているところだね。



―「会社員」としての米づくりー

古川さん:担い手不足だからって自分たちが大変大変ってやっていたら若い人たちが農業に就きたくなくなるし、親世代もこんな大変な仕事を子どもにやらせたくないとなってしまう。

遠藤:そうなると、本当に減るだけの未来しかないですよね。

古川さん:だから、そうじゃないって伝えるために、今は会社としてやっていますと示す必要がある。農繁期は難しいけど、普段は平日5日勤務の土日はしっかり休みが取れる。

その間も田んぼにがんじがらめでは無くて、参観日があれば有給をとって休むことができる。

だから農業も会社とおんなじ考え方で、メリハリをつけて働ける環境であれば、もっと若い人たちもやってくれるんじゃないかと思うんだよね。すごく魅力的な仕事だと思う。

遠藤:すごく新しい視点でした。私の印象では、農業って年中休みが無い仕事だと思ってました。土日休みの形を取れる会社員という形だと、農業に携わるハードルが低くなりそうですね。

古川さん:自分で新規就農したいって人がいたらうちの会社で研修を受け入れることも歓迎するし、研修後に違う場でやるってなっても、できた繋がりは大切にして、助け合う関係を保っていけることが理想だと思う。

そこからまた新たな出会いがあって、繋がりが広がっていくといいよね。

遠藤:沙織さんが今DASH村とかふるさと納税とか、様々な場面で活躍されているのは繋がりや出会いを大切にされているからなんですね。


―これからの大玉村の田園風景は―

遠藤:これからの大玉村の姿、こうあってほしいという理想像はありますか?

古川さん:まず1番は村に住み続けたいということ。自分の話になってしまうけど、死ぬまで田んぼに携わっていたいという想いがあるし、大玉村が誇る田園風景や昔から続く産業は残ってほしいなと思う。

そして、外から人が来ることも歓迎する。若い人が村に入ってきてコミュニケーションをとれる場が増えれば、村がもっと活性化していくだろうから、すごく良くなっていく気がするんだよね。

遠藤:「村に住み続けたい」という想いが村を守っていくんですね。

私自身、4月から大玉村で協力隊として活動をしている中で、外から来た人に対する大玉村民の温かく歓迎する空気感を行く場所行く場所で感じられて。それが大玉村の大きな魅力の一つだなと思わされています。

今日の対談で沙織さんからお話を聞いて、大玉村民の方々のウェルカムな空気感の理由が少しわかったような気がします。

古川さん:そうだね。

そして、村で生活している女性たちが本当に素晴らしいと思う。本当に働き者で、仕事や畑や家のことをやって。自分のことを一番に考えないで、家族を一番に考えているから。

遠藤:女性たちの強さが村を支えている大きな要因なんですね。

私も村に来てから村の女性たち・お母さん方と関わる機会が多いのですが、出会ったばかりの他人の私のこともすごい気に掛けてくれて、最近は調子どう?とか心配事はないかい?って気付いてくれて、感謝することばかりです。目が何個ついているんだろうと思います。(笑)

古川さん:みんな、協力隊として小川くんと遠藤さんが村に来て色々やっているのを見て、頑張ってやっているなと思っている。みんな心が優しいんだね。

村の男の人たちはどんと構えて家や村を守って、女の人たちは「いいばい」「楽しいばい」って優しく歓迎する。そういうのが村のいい所だなと思うよ。

遠藤:先の広がりとか楽しさを見ているんですね。

古川さん:まあでも、外からどんどん人が入ってきても、昔からの産業はいつまでも継承して残していってほしいなと思う。

いつまでもここにいられたらいいな、いつまでも田んぼをやれていたらいいなと思う。ここ一帯全部に家が建ってしまったら大玉村の価値がなくなってしまうよね。

遠藤:この田園風景がなくなったら、全く違う場所になってしまいますよね。

田んぼの減少を阻止するためにも、ドリームアグリ㈱や村の農家さん方の存在が益々大きくなっていきますね。

私も、何十年後もこの田園風景が守られていってほしいなと思います。

今日は稲刈り時期のとてもお忙しい時期に対談のお時間をいただき、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!



―対談を終えて―

農業のこれからを見据えた「会社員」という形式での働き方は、私にとってまさに新鮮そのものでした。技術進化と同時に、農業と人の関わり方も進化していることに気付かされた対談でした。

そして、あだたらドリームアグリ㈱本社でもお米を購入できることをご存じでしょうか。

生産者さんと実際に顔を合わせられる距離感もまた、大玉村の良さだと感じています。10月、新米の時期。大玉村の恵みを存分に味わいましょう!



あだたらドリームアグリ株式会社
あだたらドリームアグリ 公式ページ | 福島県 大玉村 (dream-agri.com)